Life Story ~神様との約束~

 

Life Story

~神様との約束~

 

 

神様ってなんの仕事してるんですか?

見ての通りじゃよ~

ライフ・ストーリー。

 

 

それは、私達がしてきた、

「神様との約束」の

物語。

 

 

 


 

私達の知らない、天井の世界で。

 

ずっと、本を読みふける、神様がいました。

 

見習い天使、ハッピーは、神様に質問しました。

 

「神様はどうしていつも、本を読んでいるんですか?」

 

「人間のことを、よく知るためだよ。」

 

ハッピーは不思議でした。

 

なぜなら、

神様の部屋には

人間界が見える鏡があるのです。

「人間のことを知るのは、鏡を見ればよいのでは?」
「ふふっ、見るだけでは分からないことが、この本には書かれているんじゃよ。」

 

(変なの。)

 

ハッピーは、本を読みふける神様のかわりに、鏡で人間界を覗きました。


 

「…だからなんで分からないのよ!普通気づくでしょ!?」

 

「こっちだって疲れてるんだよ!偉そうにすんな!!」

 

ケンカばかりしている、夫婦が見えました。

 

「ねぇねぇ、見てみて!!」

 

小さな男の子が、面白い格好をして。

お父さんとお母さんを笑わせようとしていますが、ケンカをしている二人の目に、少年の姿は映りません。

 


「けんじったら、また無視されちゃってます」

 

「そうかいそうかい」

 

「しょんぼりしてますよ。かわいそうに。」

 

「そうかいそうかい」

 

「神様、何かしないんですか?」

 

 

「…」

 

何も答えない神様に、ハッピーはイライラします。

 

 

でも、仕方がないのです。

 

ハッピーはため息をついて、また、別の映像を見ました。

 

そこには、一人で泣いている女の子が写っていました。

 

「神様、かおりちゃん、お母さんが家でして、帰ってこなくなっちゃったみたいです。親戚に引き取られるみたいですよ。」

 

「そうじゃのう…」

 

神様は、やっぱり本を読んでいます。

 

ハッピーは、歯がゆくなりました。

 

というのも、神様も、天使も、

 

人間に対して、

 

何もすることができないからです。

 

どんなに馬鹿げたことをしていても、止められません。

どんなに可哀想な人を見ても、助けられません。

 

(僕たちは、いつも見ているだけ…)

 

「神様は、ただ見ているだけで、辛くないですか?」

 

「わしらは、わしらにできることをすればいいんじゃよ」

 

(そんなこといって、あんた何もしてないじゃないか…)

 

神様が本を読みふけり。

 

ハッピーが歯がゆくイライラしている日々は、その後もずっと続きました。

 

 


 

 

それから数年が経ったある日。

 

 

珍しく、神様が、本を読んでいませんでした。

 

なんだか、とってもステキな「鍵」を、磨いています。

 

「なんですか?その鍵?」

 

「”ライフストーリー”の鍵が、返ってきたんじゃよ。」

 

「ライフストーリー?」

 

 

 

「この鍵は、この本の鍵じゃ。

開けて、読んでみるかね。」

 


けんじは、ピン芸人として、小さいライブハウスで、舞台に立っていました。

 

そこそこの笑いはとれるものの、同じ舞台にたっているメンバーの中では、伸び悩んでいました。

 

「なぁけんじ、オレたちとコントLiveをやらないか?絶対そのほうがけんじのキャラが生きると思うんだけど」

 

「いや、オレは、ピン芸人で天下取るって決めてるから!!」

 

メンバーの誘いを、いつもけんじは断っていました。

 

(なんだ、あいつらのコントなんて、ネタ作ってるやつに面白くさせてもらってるだけだもんな…。

おれはおれの力で笑いをとりたいんだよ…)

 

意気込むけんじでしたが…。

 

 

けんじの舞台にはいつも、まったく笑わない女性がいるのです。

 

しかも、いつも、一番前に。

 

 

けんじは、笑わないその女性のことが、気になってしまいます。

 

(最前列で笑わないなんて…感じが悪いな…

もしかしてファンじゃなくて、偵察かなにかに来ているヤツなのか??)

 

せっかく大ウケした舞台でも。

彼女一人が笑っていないことが、気になって仕方がありません。

 

 

なんとか、その女性を笑わせてやろう!!

 

毎回、意気込んで舞台に立つのですが。

 

 

彼女は笑いません。

でもやっぱり舞台には来るのです。

 

なんとなく、

(やっぱりお前は面白くない)

と言われているような気がしてきてしまいます。

 

うっぷんがたまったけんじは。

ある日の、事務所のお笑いメンバー全員でやっているローカルのラジオ番組で、

つい、こんな話しをしてしまいました。

 

「僕のライブ、殺し屋が見に来てるんですよね」

「えっ!?どういうことですか?」

「いつも一番前でピクリとも笑わない女性がいるんですよ。オレの命を狙っているスナイパーが来てるんだと思うんですよね。オレが実はアラブの石油王の息子だと知っていて…」

「いや、単純にあなたが面白くないだけでしょ!何おおざっぱな嘘ついてるんですか!」

「なんだと~」

 

けんじは、おもしろおかしくした話しただけのつもりでしたが…。

 

そのラジオが放送された後から、その女性はライブに来なくなりました。

 

けんじは内心、ホッとしていました。

ところが。

 

けんじに、めったに来ないファンレターが届いていました。

 

「はじめまして。

いつもラジオ聞いています。

 

実は、ライブにも何度か足を運ばせてもらっていました。いつも、最前列で。

 

でも、わたしは感情が顔に出ない病気なんです。いえ、原因がわからないので、病気ではなく、たんに心の持ちようかもしれませんが。

とにかくいつからか、笑うことができなくなってしまいました。

 

私が笑っていないことで、あなたの気分を害してしまうことに、どうして気づかなかったのか…。目の前に笑わないお客さんがいたら、それはわかりにくいですよね。

 

でも、あなたのライブを見ているとき、笑うことはできなくても、心の中はとても楽しい気持ちでした。

もう、直接ライブには行かないつもりです。でも、これからもラジオを聞いています。いつかテレビで活躍されている姿を見るのを楽しみにしていますね。

笑えない私でさえ、幸せな気持ちにさせてくれるけんじさんですから、きっともっと有名になると思います!」

 

 

手紙には、そんな風に書かれていました。

 

 

「なんてことをしてしまったんだろう!!」

 

けんじは自分の軽はずみな言葉が、自分の大切なファンを傷つけてしまったことに後悔しました。

 

 

いてもたってもいられなくなり、

返事の手紙を書きました。

 

「お手紙ありがとう。

ごめんなさい。

僕がバカだったんです。

うまく言葉で伝えられないので、

もしよければ、またライブに来てください。

チケットを入れておきます。」

 

 

けんじは次の舞台に向けて一生懸命、新しいネタを書きました。

 

彼女を笑わせることだけを考えて。

次の舞台にも、彼女は来ました。

 

彼女はやっぱり笑っていません。

 

でも、それでもいい、と思いながら、一生懸命舞台に立ちました。

 

 

そうしたら。

 

彼女は、泣いていました。

最前列で。

 

けんじの舞台を見ながら、泣いていたのです。

 

(どうして…)

 

そのライブが終わってから数日後。

 

彼女から、手紙が届きました。

その手紙には、こう書かれていました。

 

「ライブにご招待いただいて、ありがとうございました。

せっかく、あなたがここまでしてくれたので、笑顔で見たかったのですが、やはりどうしても笑うことができませんでした。

そんな自分が情けなくて、涙が止まらなくなりました。

きっと驚かれたでしょうね。ガッカリさせてしまったんじゃないかと思うと怖いです。

 

 

でも…

泣くことすら、私にとっては何年も何年も前のことでした。悲しいと感じたのも、本当に久しぶりです。

不思議なんですが、それ以来、少しずつ他の感情も取り戻せている気がします。

 

けんじさん、

私に、笑いだけでなく、涙も思い出させてくれてありがとう。

今度こそ、笑顔を見せられるように、またライブに行かせてもらいます。

 

P.S でもまた泣き顔を見られたら恥ずかしいので、今度から後ろの席をとりますね(笑)

 

 

かおり」

 

 

 

 

 

 

彼女の手紙を読んでから。

 

けんじはしばらく放心していました。

 

 

これまでにないくらい、

心が満たされているのを感じました。

 

 

なにか、

なにか、

大切なことに気がつけそうな気が、

していました。

 

 

ふと、けんじは思い出しました。

 

自分がどんなに頑張っても、笑ってくれなかった母親のことを。

 

 

ぼくは、

お母さんに笑ってほしいとずっと思っていたけど、

 

 

もしかしたら。

 

 

もしかしたら、

お母さんは、

本当は、

泣きたかったんじゃないだろうか。

 

そして、

僕は、

笑顔じゃなくても良い

 

お母さんの本心が知りたかった。

 

お母さんの本音を、僕に分かち合ってほしかっただけだったんだ…

 

 

この、手紙の彼女のように。

 

 

 

 

そう気づいたら、涙が止まらなくなりました。

 

 

 

僕はお母さんを笑わせられなかった自分を

払拭するために芸人を目指してきた。

 

だから人の力を借りて笑いを作るのは嫌だった

オレの力だけで笑わせられる人にりたかった

 

でも違う

 

オレが求めているのは

誰かを笑わせられる自分になることじゃない

 

本音を人と分かち合うことなんだ

 

 

 

 

 

 

それから数年後。

 

若手のコントの挑戦番組で、決勝戦で戦うけんじと。

 

その様子を、笑顔で見守る、かおりの姿がありました。


 

「この本は一体…?」

 

 

「この本はの。

彼らが自分で、人生のテーマを決めて、そのテーマをまっとうするために考えた”物語”が書かれているんじゃ。」

 

神様は続けました。

 

「まだ、生まれる前の命たちは。

 

人生のテーマを詰め込んだ物語を、わしのところに持ってくる。

 

わしは、その本を預かって。

 

似ているテーマをもった”命”が引き合うように、縁を結び、彼らに『鍵』を渡す。

 

 

ライフストーリーを忘れないため、そしてテーマを持った者同士が引き合う『命の鍵』じゃ。

 

 

けんじと、かおりはお互いのテーマが引き寄せあって、出逢った二人じゃ。

 

まぁ、彼らのストーリーは、まだ途中じゃがの。

第一章完!ってところかの。」

 

「じゃあ、彼らの人生の運命は、彼らが自分で決めてるってことですか?」

 

 

「うむ。

 

だからいろんな事件も起きる。

 

辛いこともあるし、悩むこともある。

 

それも、彼らが自分で選んだストーリーなんじゃよ。」

 

もちろん、あらすじ通りに上手くいかないこともある。いろんなストーリーがぶつかりあって、予期せぬ出来事もある。

 

だからこそ、物語の”本筋”に戻ってこれるかは、その人次第なんじゃ。」

 

「…」

 

 

 

「彼らが望むストーリーを描くための環境に、命を授けること。

 

それがわしらの仕事じゃ。」

 

 

「…じゃあそれが終わったら、ぼくたちは見ているだけ、ですか?その、ストーリーとやらを、途中で忘れちゃう人も、いるんですよね?」

 

 

 

「ハッピー。

 

彼らをかわいそうだと思うんじゃなくて、

 

信じておあげ。

 

彼らはみんな、自分で決めた人生を、まっとうしようとしておるんじゃ。

 

 

みんな、ちゃんと、自分の描いたハッピーエンドを向かえる力を、持っている。」

 

わしらの仕事は、その力を信じることじゃ。」

 

「…はい、神様。」

 

 

 

 


 

「神様、ぼく考えました!

彼らがストーリーを忘れないように、僕、ここで、毎日いろんな人のライフストーリーを音読します!!」

 

「わかったわかった」

Fin.

 

 

 

 

~あとがき~

※この本の内容は、私が考える「ライフストーリーとは」を、物語化したものです。宗教とは一切関係ありません。

 

この物語は、「自分の人生で伝えたいことを物語にする」ための、「ライフストーリー制作ワークショップ」で作成した絵本です。

作者:大和田悦子

「結び絵手紙」教室主催、講師。

ライフストーリー図書館プロジェクト責任者。